2024-11-01から1ヶ月間の記事一覧
ノートは数学の授業を板書したもので、その冒頭にはその授業の日なのだろう、それぞれの日付が記されている。一ページ目の冒頭には『二◯二二年一月十四日(金)』と書かれていた。 二◯二二年……一月十四日……。 今が二◯二四年なので、今から二年前。その一月と…
そもそも、あの白い影は本当に佐々木真衣なのだろうか。 高校で真衣と同じクラスだった子にメッセージを送って確認した時は、『真衣は高二の冬に亡くなった』という返事が返ってきた。 自分も高二の時に佐々木真衣が亡くなったことを聞いた気がする。それは…
カーテンの隙間から、秋晴れの空から差し込む日差しが漏れている。その日差しは菜摘の座っているベッドの上にまでその手を伸ばしていた。 どうすればいいのか。今、自分は何をすればいいのか。 そのことを考えていた。このままベッドの上にいても、状況は何…
俯いた格好で、あの白い影がそこには立っていた。 ドアを挟んで、菜摘とその白い影は一メートルも離れていない位置に立っている。その姿を見た途端、菜摘の体は金縛りにあってしまったかのように固まった。指一本動かせなかった。恐怖のあまりその覗き穴から…
菜摘はしばらくベッドの上に横たわり、闇の中で目を光らせていた。 先ほどのチャイムは、自分が寝ぼけていて、夢の中のシーンを現実の世界の出来事のように勘違いしているだけなんだと必死に自分に言い聞かせていた。こんな時間に菜摘を訪れる人なんているわ…
4 その夜は、菜摘はベッドの上でなかなか寝付くことができなかった。 どうしても殺された武井有加里のことを考えてしまう。そしてその有加里の元を訪れたという白い影のことを考えてしまう。その白い影がその数時間前に、菜摘の住むこのマンションの前に現…
高校の制服姿の有加里が友達と一緒に写っている写真で、有加里の隣に立つ女性生徒の顔はモザイクで消されている。だけど菜摘はその友達の顔もはっきりと思い出すことができた。有加里とよく一緒につるんでいた女子で、そして有加里と一緒になって真衣へのい…
なぜ……ここにいるの……。 なぜ……こっちを見ているの……。 眼の前で起こっている事態がうまく理解できない。 ただ、体は小刻みに震え始めていた。それは決して寒さのためだけではなかった。 菜摘はベランダの地面に落ちたシャツをそのままにして、部屋の中に飛…
それから数日は、菜摘の身に何も起こることなく過ぎていった。 ただ、相変わらず夜にあの公園の前を通らないようにはしていたし、夜一人で外を出歩くことも避けるようにしていた。 大学の学園祭も迫っていたが、サークルの出し物の準備には千穂に『体調が悪…
三十分ほどして返信が来た。 菜摘はスマホを手に持って返信が来るのをじっと待っていたので、そのスマホが小さく震えたのにすぐ気付いた。急いでメッセージアプリを開く。そこには友達から来た次のようなメッセージが表示されていた。 『覚えているけど、ど…
3 菜摘は自分の手元にあるノートの表紙をしばらく見つめていた。 佐々木……真衣……。 完全に忘れていた高校の時の記憶が次々に蘇ってくる。そして菜摘の胸の中に一つの疑問が頭をもたげ、それがみるみる大きくなっていくのにはそれほど時間はかからなかった。…
それのきっかけが何だったのか、今となっては思い出せない。 おそらくほんの些細なことだったのだろう。 クラスの中で浮いた存在になっていた真衣に最初にちょっかいを出し始めたのは武井有加里だった。有加里は菜摘とは別の中学出身だったので菜摘が所属す…