創作ノート

短編小説を書いています。

閉じ込められた部屋(6)

 

壁に掛けられた奇妙な絵。

一メートル四方くらいの、この小さな部屋には不釣り合いな大きな絵だった。閉じ込められた部屋という閉鎖空間。その空間をさらに重苦しく、そして息苦しいものにしている。

真尋は顔を絵に近づけた。そして細部を観察していく。

その絵は山脈と森をバックにして、手前側に塔のような奇妙な建物が描かれている。全体として灰色と黒を基調とした陰鬱な絵だった。その建物にはいくつかの窓があった。その窓枠を蔦が絡み付いていて、その建物の古臭い印象を醸し出している。

その時、窓枠の一つに、人影が描かれていることに気づいた。

「これは・・・」

顔を近づけて確認する。

その人影は窓から少し離れているのか、ぼかして描かれている。だけど、よく見るとそれは少女のようだった。灰色のブラウスを着て、窓の外を無表情に見下ろしている。どこか存在感が希薄な子供の姿のように見えた。

「少女の・・・、姿・・・」

真尋は無意識に呟いていた。

そしてそのままさらに絵を確認していく。

その建物の中央には大きな漆黒の扉が描かれている。扉には不思議な幾何学模様が描かれている。見ていると気分が悪くなりそうな模様だった。そしてその扉はわずかに開いていて、中から薄紫色の光が漏れている。

「あれ?」

その薄紫色の光を逆光に浴びて、そこに一人の人影が描かれているように見えたのだ。だけど逆光を浴びた姿になっていたため、その顔は黒く塗りつぶされていて、表情を確認することはできなかった。だけど、身長の高さ、そして長い髪の姿から、大人の女性のように見えた。

 

窓の外を見下ろす少女。その少女は、今から建物を出ようとしているこの女性を見下ろしているのだろうか・・・。

そうだとしたら、どうしてこんなにも無表情なのだろう・・・。

 

真尋はさらに絵の確認をしていく。

建物の遠景に描かれた森と、その森のさらに奥に描かれた山脈。その二つを包み込むように、鉛色の空が描かれている。それらを一つずつ確認していったが、そこには特に目を引くようなものは描かれていなかった。

 

 

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