創作ノート

短編小説を書いています。

閉じ込められた部屋(24)

 

黒と赤・・・。

どちらが正解なのか・・・。

 

そもそもボタンを押すこと自体が正解なのかもわからない。

黒いボタンを押そうが赤いボタンを押そうが、いずれにせよ真尋の身に絶望的な何かが起こってしまうという可能性もあるのかもしれない。どちらのボタンも押さずにひたすら助けを待つ、という選択肢が正解の可能性もあるのかもしれない。

そう考えると、真尋はますますその目の前のボタンを押すことに抵抗を感じた。

だけど、このボタンは絵の後ろにわざわざ隠されていた。

真尋がその存在に気づいたのは、本当に偶然だった。このボタンの存在に気づかないという可能性も十分にあった。その一点だけをとってみても、やはりどちらか一方のボタンを押すというのが正解である気がした。

様々な思考が真尋の頭の中を回転し続ける。

そのうち、ある一つの考えが真尋の頭の中に浮かび上がってくる。それは次のような考えだった。

 

そもそも、いくら考えたところで、今の私に答えなんて分かる訳がないんだ・・・。

だって、なぜ自分が今ここにいるのかすらも分からないのに・・・。

 

そのような自分が、何時間、何十時間考えたところで、答えに辿り着ける訳がない。

それは一種の開き直りだった。あとは、ボタンを押さずに何もせずにこの閉ざされた部屋で助けを待ち続けるのか、あるいは、何が起こるか分からないが、「ボタンを押す」という明確な行動をとってみるのか。自分がどちらを選択したいかだけの問題のような気がした。

もしそうだとしたら、真尋は、ボタンを押してみようと思った。待ち続けていても本当に答えが現れるのかは分からない。だけどボタンを押すことによってポジティブなものかネガティブなものかは分からないけど、何かしらの結果が訪れるはず。

今ここでボタンを押さずに、

「ボタンを押すべきか、押さずに過ごすべきか」

そのことを迷いながら、いつくるか分からない助けをこの部屋でひたすら待ち続ける。

そんなことは絶対に嫌だった。その状況を想像するだけでも気が狂いそうだった。

 

ボタンを押そう・・・。

 

真尋は決意した。

だけど次の問題は、黒いボタンと赤いボタン、どちらのボタンを押すか、だった。

そのヒントもこの部屋のどこかにあるのだろうか。

真尋は改めて部屋の中を見回す。

壁から外されて今は床に置かれている奇妙な絵。一つの机。その机の上に置かれた一枚の紙。そして鍵がかけられて開かないドア。

真尋は床に置かれた絵を手に取った。絵の裏側を時間をかけて観察する。木枠にキャンバスがホチキスのようなもので固定されている。中央には絵を壁に掛けるための掛け紐が設けられている。

特に異常は見当たらなかった。ヒントとなるような書き込みがないかと期待していたのだけど、それらしい書き込みも見つからない。

真尋はその絵を床に戻した。

 

 

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