創作ノート

短編小説を書いています。

閉じ込められた部屋(42)

 

その時だった。

 

ガタン。

 

突然、大きな音が部屋に響いた。

真尋はその音に驚き、一度大きく体を震わせる。

「何? 何の音?」

思わず声を挙げていた。

音は頭上から聞こえた気がした。視線を上に上げる。

天井は50センチ四方くらいの四角いパネルが敷き詰められたような意匠になっている。真尋が立つ位置から少し離れたところにある天井の隅で、その中の一つが揺れていた。そのパネルは回転式の扉のようになっていたようで、完全に開かれていて、壁に設けられた蝶番を中心にして行ったり来たりを繰り返している。そのパネルが開いた時の音のようだった。

真尋はしばらく固まったままその揺れる扉を見つめていた。

この扉は、なぜ突然開いたのか。

真尋がこの部屋に入るためのドアを開けてから、ある一定時間経つと自動で開くように設定されていたのか。

あるいは、この部屋にいる真尋を観察する誰かがいて、その誰かがロックを解除したのか。

もし後者だとしたら、その意図の裏に、絶望的な何かが隠れているような気がした。だから、真尋はしばらくその場を動くことができなかった。息を潜めるようにして、ただじっとしていた。

振り子のように揺れていた扉は、やがて完全に止まった。

それからしばらくは、静寂がこの部屋を埋め尽くしていた。

 

何も起きない・・・。

 

このまま待っていても何も起きないようだった。

真尋は、その扉が開いた理由を探る必要があると思った。そうしないと、この閉じ込められた部屋に関する重大な何かを見落としてしまう可能性がある。

意を決して、一歩一歩その扉に近づいて行く。視線はその扉からは決して外さなかった。

その扉のすぐ下までたどり着くと、顔を上に向け、その扉で開かれた中を覗き込む。

奥には空間があるようだった。だけど部屋の照明がその中まで届かず、闇に包まれていて、真尋の目にはよく見えなかった。

ただ、その奥に何か鈍く光るものが見えた気がした。

真尋は両手で目の周りを筒のように覆う。部屋の照明をその両手で遮り、暗闇に目を慣らすようにして、その扉の奥の空間をじっと凝視した。

少しずつ、その鈍く光るものの正体が見えてきた。

それは金属製の円形の筒のようなもので、大きさは直径10センチくらいのものだった。その円形の開いた口を下側に向け、その奥の天井に設置されていた。

 

 

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